客人日記

どんどんたのしい

旅をすること 写真を撮ること

缶コーヒーを片手に、白い息を吐きながら駅へと歩く。いつもより早い朝に頭はぼんやりとして、でもどこかうわついた気持ち。

駅の手前で一服ふかして、切符を買う。よく見る風景、いつもの朝、私の町。

幾つか乗り換えをして、飛び乗った列車にはもう、私のいつもはなかった。人々のことばも、営みも、見える景色も。誰かのいつも。

私は、誰かのいつもにこっそり忍び込むのが好きだ。時々こうやって、遠い遠いところの誰かのいつもに、時間と一緒に溶け込むんだ。なんでもない誰かの日常が、きらきらして見える。当たり前のことが特別になる。

だから私は旅をするんだ。

幾つも並べられた額の中を、まるで絵画が流れてゆくように、車窓がうつりかわる。じっと眺めているだけで、心地よい振動に身を委ねているだけで、時を忘れていられる。

無造作に切り取られた風景が時をたゆたい、時間も場所も、私が誰なのかも、何もなくなる。

ただ、確かに言えることは、今私は二本のレールの上を走っている。知らない誰かと一緒に。

 

降り立った駅でも、その日の宿でも、気持ちはどこかふわふわしてて、明日のことなんて考えもしない。

そして朝起きたら、カメラをぶら下げてふらふら歩く。きらきらしたものを捕まえに。

車窓が風景を切り取るように、無造作に、時をたゆたいながら、世界をブライトフレームで切り取る。時間も場所も、私が誰なのかも、何もなくなる。